松岡病院

佐賀県鳥栖市西新町。精神科救急、内科救急指定。認知症専門病院。佐賀県物忘れ相談ネットワーク登録病院。

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新着情報

くれないかい12月( 健やかに眠れていますか? 〜不眠症とお薬について〜)更新しました。

 令和3年も師走になりました。第6波に備える日本の感染者数は激減していますが、他国での感染者の増加や新たな変異株の登場などまだまだ新型コロナの収束には至らないようです。長引くストレスの中で不眠を感じる人も増加しています。頑張り続けている皆様に令和3年が健やかな眠りで締めくくられますよう願いを込めて不眠症とお薬についてお話をしましょう。

不眠症とは?

 寝つけない(入眠困難)・途中で目が覚める(中途覚醒)・早く目が覚める(早朝覚醒)・眠れた感じがしない(熟眠障害)などの症状が1ヶ月以上続き日中に倦怠感・意欲低下・集中力低下・食欲低下などの体調不良が出現する病気です。今や日本人の5人に1人が睡眠問題に悩んでいると言われます。不眠症は特殊な病気ではありませんがコロナ禍において不眠を感じる人は増加傾向にあります。

睡眠時間と睡眠の質

 日本人の平均睡眠時間は約7時間程度ですが、睡眠時間には個人差があります。長ければ良いという訳ではなく睡眠の質が大事です。良質な睡眠が取れて、日中の活動に支障がなければその人にとって健やかな睡眠と言えます。睡眠中は深い眠り(ノンレム睡眠)と浅い眠り(レム睡眠)を繰り返しています。質の良い睡眠とは寝入ってから約3時間の間に深い眠り(ノンレム睡眠)に達すれば疲労回復が出来、朝起きた時に満足感が得られます。睡眠中にはさまざまなホルモンの分泌が行われます。体内時計のリセット、免疫力のアップや代謝の改善を促します。良質な睡眠を確保するためには1日のリズムも大事です。適切な食事習慣や入浴の時間や温度、飲酒や喫煙にも注意が必要です。日常生活を見直してもなお不眠が続き体調不良が改善しない時には治療薬があります。

不眠症のお薬

 まずストレスや基礎疾患(生活習慣病など)不眠症の原因を解消することが一番です。夜間無呼吸症候群など睡眠中に呼吸が止まっている疾患もありますので、不眠が続く場合は必ず医療機関に相談してください。

 一般的に睡眠薬には作用時間が2~4時間程度から24時間以上持続するものがあります。これまで使われてきた睡眠薬は脳の興奮を抑えて不安を軽減し眠気を起こすお薬でした。しかしふらつきなど副作用があり特に高齢者では転倒のリスクが問題でした。最近従来の睡眠薬と異なり副作用が少ないと期待される睡眠薬が登場しました。

新しい睡眠薬

 新しい睡眠薬にはメラトニン受容体作動薬として2010年に発売されたロゼレム、オレキシン受容体拮抗剤として2014年に発売されたベルソムラと2020年に発売デエビゴがあります。

  • メラトニン受容体作動薬

メラトニンは脳の松果体から分泌されるホルモンで夜になると眠くなるように働きます。ロゼレムはメラトニンと似た構造式を持ち催眠作用を持った睡眠薬です。入眠の効果が穏やかで副作用が少ないお薬です。

  • オレキシン受容体拮抗薬

オレキシンは日本人の櫻井武先生によって同定された物質で、脳内で睡眠・覚醒に関与します。ベルソムラもデエビゴもオレキシン受容体をブロックすることで睡眠へと導きます。依存性やふらつきが少なく転倒のリスクが軽減され、健忘など認知機能や呼吸への影響も少ないとされています。

 

 子供の頃はあっという間に寝入っていたものですが、年齢とともに眠りは浅く短くなってきます。現代のストレス社会では幼児にも不眠症が見られるようです。お薬を服用せずに健やかに眠れるようになることが一番ですがなかなか難しいものです。「1日ぐらい眠れなくても3日ぐらいしたら眠れるだろう」と寛容になれば不眠症の出口が見えてくるでしょう。それでも不安な方は無理せずにご相談ください。

 

  2021/12/02   matsuoka