今シーズン大流行の兆しとなっているインフルエンザは全国で警報レベルになりました。(1月23日現在)インフルエンザによる脳症や異常行動とみられる転落事故など連日インフルエンザ関連の報道がたえません。インフルエンザの新薬(ゾフルーザ)も話題になっています。そこで2月ピークを越えるまでは万全の予防対策が必要となるインフルエンザ感染症についておさらいとインフルエンザ治療薬についてお話しをしましょう。
インフルエンザウイルスとは?
インフルエンザウイルスはA型,B,型C型に分類されます。A型は人以外に鳥、豚、馬に感染し、感染性が非常に強いウイルスです。B型、C型は人にしか感染しないと言われていますが、C型は病原性が弱いため流行しているのはA型とB型になります。症状は突然の高熱、頭痛、筋肉痛や関節痛から始まり、強い喉の痛み、咳鼻水になりますが特にA型インフルエンザでは高熱が持続する傾向と免疫力が低下している高齢者の方などでは肺炎の合併など重症化する可能性があります。今シーズンも高齢者施設での死亡例が報告されています。一方、小児では熱性けいれんや急性脳症など重篤になるケースもあります。また、異常行動により転落事故も報告されています。異常行動については急激な発熱や脱水による可能性、治療薬による可能性など全数調査が実施されていますが、多くは発症1〜2日の早い段階で起こっているため、発症初期の見守りが重要です。
インフルエンザ治療薬
平成31年2月現在、インフルエンザ治療薬には5種類があります。
製品名(一般名) |
投与 経路 |
用法 |
予防 投与 |
薬価総額 (3割負担) |
タミフル (オセルタミビル) |
経口 |
1日2回 5日間 |
可 |
816 |
リレンザ (ザナミビル) |
吸入 |
1日2回 5日間 |
可 |
882 |
イナビル (ラニナビル) |
吸入 |
単回 |
可 |
1283 |
ラピアクタ (ペラミビル) |
点滴 |
単回 |
不可 |
1864 |
ゾフルーザ (バロキサビル) |
経口 |
単回 |
不可 |
1436 |
経口薬と吸入薬、注射薬です。昨年3月に発売されたゾフルーザは新薬です。ウイルスに対する作用機序が従来の薬と異なっています。タミフル、リレンザ、イナビル、ラピアクタは細胞内で増えたインフルエンザウイルスが細胞外に出ることを抑さえる作用ですが、ゾフルーザはウイルスそのものが細胞内で増えるのを抑制します。体内からウイルスが死滅する時間が短縮し症状改善が早く感染期間も短縮するということです。市場に出たばかりのお薬ですが今シーズンは第一選択薬として多く処方されているため、1月25日に国立感染症研究所はゾフルーザ耐性株が検出されたことを公表しました。インフルエンザ症状の重症度は罹患者の免疫力によって異なりますが、ゾフルーザとタミフルでは改善まであまり変わらなかった等の報告もあります。今後耐性の広がりについては情報収集が必要です。ちなみに当院のインフルエンザ治療薬はタミフルとイナビルの2種類でゾフルーザの採用はありません。
インフルエンザに罹患したら?
発症48時間以内のインフルエンザ治療の投与、安静、水分補給です。インフルエンザの診断を受け治療開始された後は治療に専念し発症後5日間あるいは解熱後2日間は自宅にて安静を守ってください。この時期、医療機関では診察まで2〜3時間かかる待合室の現場になります。これは患者さんの病状悪化や、感染拡大の観点からリスクの高い現状です。慢性疾患の遠隔診療が始まっていますが、急性疾患のインフルエンザ診療に関してはいつも診ている「かかりつけ医」が、スマホ等での予約診療、遠隔診療の臨時適応など個別のリスクを十分考慮した上で診療に活用できれば患者も医療機関も疲労、疲弊が回避できる部分があるのではないかと個人的には考えます。
そして、この時期、体調の悪い方へ
まず大切なことはインフルエンザにかからないということです。予防接種はしましたか?毎日の手洗い、うがい、マスク着用、加湿、そして可能な限り人混みへの外出を控えましょう。働き方改革としても、このインフルエンザ流行期に体調が悪いのに仕事場に行かないでください。どうぞ、お休みください。無理に出勤したが発症し、逆に職場にウイルスを撒き散らせる結果になるかもしれません。体温を測り十分水分をとってかかりつけ医に電話をしてください。待ち時間を少なく調整できるかもしれません。
インフルエンザ治療はご本人のためだけではなく地域や職場の他人を守るためにもルールを守りしっかり休むことが大事です。
受験や国家試験前の学生さんが治療や予防投与を希望して受診されています。寒くインフルエンザ流行の時期に重なるストレスを私たちも共有しています。変えませんか?日本も秋入学へ!2年後大学入試は内容が変わりますが、内容や時期ではなく、いっそ一括就職、一括入試制度自体を見直すことを考えてみては如何でしょうか?話が発展しすぎましたが、どうぞ体調管理を万全に今年のインフルエンザに負けないで頑張りましょう!