松岡病院

佐賀県鳥栖市西新町。精神科救急、内科救急指定。認知症専門病院。佐賀県物忘れ相談ネットワーク登録病院。

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新着情報

くれないかい10月(抗体カクテル療法! 〜軽症者への治療法が始まっています〜)更新しました。

    あっという間に東京オリンピック・パラリンピックが閉幕し、同時進行で拡大した新型コロナウイルス感染症の第5波もようやく落ち着き10月1日には緊急事態宣言が解除されました。もちろんまだまだ安心はできません。予防のための新型コロナウイルスワクチン接種率は国民の5割を超えましたが、感染対策の両輪となる治療薬が待たれます。今月は軽症者への治療として特例承認された中和抗体薬のカクテル療法についてお話ししましょう。

 

抗体治療「抗体カクテル療法」の考え方(日本感染症学会)

    新型コロナウイルス感染症の特徴は発症後数日はウイルス増殖による発熱、咳、咽頭痛などのかぜ様症状が持続し、発症7日前後からは免疫反応による炎症反応が主な病態となり呼吸不全をきたして重症化していきます。全体の約20%の中等症・重症者に対しては抗ウイルス薬(レムデシビル)、抗炎症薬(デキサメタゾン)、関節リウマチ薬(バリシチニブ)が承認されています。軽症者には安静と解熱剤投与での療養しかありませんでしたが、2021年8月に米国にて2020年11月に実施した「抗体カクテル療法」の効果を検討した結果、軽症から中等症の入院リスクを減らしていたと報告されました。そして令和3年7月19日日本においても抗体治療薬「抗体カクテル療法」が特例承認されました。抗体カクテル療法は軽症の患者に対して重症化を防ぐことを目的とした治療法です。

 

適応患者は?重症化リスクの高い患者とは?

 現在、抗体カクテル療法の対象は発症から7日以内重症化リスクの高い患者で、酸素を必要としない軽症者に対して行われています。重症化リスクの高い患者とは、50歳以上・肥満・心血管障害・慢性肺疾患・糖尿病・慢性腎障害・慢性肝障害・免疫抑制状態(悪性腫瘍治療や免疫抑制剤投与など)にある患者です。

 

抗体カクテル療法とは

 中和抗体薬治療を通称「抗体カクテル療法」と言います。治療薬は「ロナプリーブ」「カシリビマブ」「イムデビマブ」という2つの薬剤を混ぜて点滴投与を行います。2種類の薬剤に含まれる抗体がウイルスと結合して細胞内への侵入を阻止します。

   中和抗体薬は発症から時間の経っていない軽症例ではウイルス量の減少や重症化を抑制する効果が示されています。当初投与対象者は入院患者に限定されていましたが、条件付きで医療機関の外来や宿泊療養施設・入院待機施設での投与が拡大されました。大阪や東京では9月より試験的に在宅療養者に対しても訪問診療、訪問看護下での投与が開始されています。東京都の分析によると投与から2週間以上経過している420人のうち400人の症状が改善し、実に95%の改善率と報告しています。

(東京都モニタリング会議資料R3.9.9)

 

抗体カクテル療法の副作用は?

    発売元の製薬会社によると1ヶ月間に投与された5,871人のうち79人(1.35%)に副作用が疑われる症状が報告されています。主なものは発熱、酸素飽和度の低下、悪寒、胸痛、嘔吐、血圧低下や上昇です。因果関係は調査中で厚生労働省とともに情報収集中です。

    抗体カクテル療法の実施の際には点滴投与から1時間以内に副作用、24時間以内は急変への対応が必要です。在宅で行うには24時間以内の病態悪化がないか確認できる体制の確保が必要でしょう。実際投与を行なっている医師からは「在宅でできる治療が増えたが、投与前の準備や副作用への対応など事前の説明も含めると在宅での対応者は限定的とわざるを得ない。またやはり副作用を考えると病院か施設で十分な体制があるところでの投与が大前提とすべきであろう。」との意見が占めています。第6波に備えて安全の中で治療が行われていくことを期待しています。

 この10月のくれないたよりを作成している9月27日に新たな新型コロナウイルス治療薬としてソトロビマブ(ゼビュディ)が特例承認されました。来年には承認される予定として幾つかの内服薬の抗ウイルス薬も治験が進んでいます。ワクチンの3回接種も始まります。ご一緒に個人の感染対策を続けながら治療薬の普及を待ちましょう!

 

 

  2021/10/06   matsuoka