紆余曲折の中、一年遅れて東京オリンピック、パラリンピックがしめやかに開催されています。素晴らしいことに連日日本のメダルラッシュが続いていますが、静かに喜びを噛み締めながら自宅での応援を続けているといった方が多いのではないでしょうか？マイクを向けられたメダリスト達は流れる汗と涙を拭いながらも開口一番「大会を開催していただいたことに感謝します。」と発します。その言葉を聞くたびになんとも胸が締め付けられています。
オリンピアンは体のピークをオリンピック当日に標準を合わせるために年単位、月単位、日単位での調整をしているそうです。一年の延期は心身ともにどんなにか健康管理が大変だったことでしょう。みなさんは長期化するコロナ禍での健康管理に悩んでいませんか？そこで今月は強靭な肉体と鋼の精神でオリンピックに臨み見事結果を残しているオリンピアンの健康管理を覗いてみましょう。
日本人オリンピックアスリートは一般人口より長寿！
大阪市こころの健康センターの研究によると1912年以降のストックホルム以降のオリンピックアスリート3,381人のデーターベースを作成し解析した結果、日本人平均に対する標準化死亡比は有意に低値でした。すなわち日本のオリンピアンは一般人口より長寿であることがわかりました。さらにオリンピック参加者内での比較として複数回参加の人の死亡率の影響を検討した結果、参加回数が多いほど死亡率が高いという傾向が有意に認められました。それでも一般人口よりも低い結果でした。また競技種目との関係では運動負荷の強い競技で死亡率が高いことがわかりました。
アスリートの食生活
アスリートの競技によってエネルギー消費量は異なりますので食事量も食事の質も異なります。たとえば身長１７５cmの在宅ワークが中心の30代男性が１日に必要なカロリー約2000〜2200kcalに対して陸上長距離競技者は3500〜4000kcal程度となります。身体活動レベルが大きく違うだけでなく、体格と競技特性に合わせて糖質、脂質、タンパク質の摂取目安も異なります。持久系アスリートは筋力瞬発力系アスリートに比べて糖質が多くタンパク質は少なめの目安になります。脂質は減量や増量によって調整されます。ビタミンやミネラルはより多くを必要としますし、水分補給量も朝夕の体重変化で調整をしています。注目すべきは体重と体脂肪率をモニタリングしながら試合当日を照準に食事療法が組まれていることです。メダル獲得の裏には計算されたオーダーメイトの食生活があるのです。
アスリートのメンタルヘルスケア
国を代表してメダルを目指すアスリート達は健康診断はもちろんのこと、今回のコロナ禍においてはワクチン接種、頻回のPCR検査等万全を期して参加のようです。一方身体と同様あるいはそれ以上にメンタルヘルスケにも重視されています。２０１９年１２月〜２０２０年１月に国立精神・神経医療研究センターを中心とするグループが日本のラクビー選手を対象に実施された調査では過去１ヶ月間に4.8％がうつ・不安障害疑い、5.2％は重度のうつ・不安障害疑いに相当する状態を経験していたと国際誌に報告しました。日本におけるアスリートに対するメンタルヘルス支援整備がいかに必要であるかを提起したものです。海外に比べて日本では個人やチームレベルではメンタルヘルスケアは実施されていますがまだまだ体系的には整備がなされてはいない状況です。今回の研究に関連してアスリートが「よわいはつよいプロジャクト」を立ち上げています。心の状態を認識し、受け入れ、困難へ柔軟な対応力を高めるための情報を発信していき、辛いことを信頼できる人と共有し支え合い解決して前に進むというメッセージを発信する場としてWebサイトを提供しています。一度ご覧になって見てください。
２０２１年この夏はコロナ感染拡大の中、国民は日本で開催されているオリンピックに行くこともできずにTV観戦しているという不可思議な毎日となりました。しかし、連日感動のパフォーマンスを見せてくれるアスリート達！どこにぶつけていいのかわからないこの閉塞感に風穴を開けてくれているようで感謝しかありません。
日々の過酷な練習、食生活、生活習慣そしてストレス管理を少なくとも数年間以上毎日続けていること、そして健康管理に余念がなければオリンピックの舞台に立つということはできないでしょう。これらの努力から強靭な肉体と鋼の精神が備わっていくのだと思います。
どんなに健康に留意していてもコロナ感染を１００％防御できませんが、私たちもオリンピアンの健康管理を参考にして、まだまだ続く巣ごもり生活での健康管理に頑張りましょう！
