アメリカ航空宇宙局(NASA)が2016年は史上最も暑い年になると警告を出していましたが、確かに梅雨明けとともに記録的な酷暑が続いています。一方では突然の滝のような豪雨や雷雨も発生しています。皆様、大丈夫でしょうか?どうぞ日々の体調管理を万全にして、今年の厳しい夏を上手に乗り切ってまいりましょう!さて、今月は先月に引き続きインスリン療法についてお話をします。進化するインスリン療法についてご紹介しましょう。
CGM(Continuous Glucose Monitoring)とは?
インスリン療法を行う上で、自己血糖測定(SMBG : Self Monitoring of Blood Glucose)は良好な血糖コントロールを行うための有効な手段です。欧米では1990年代から皮下のグルコース濃度を持続的に測定する(CGM)が可能になり、2010年4月より日本でも通常診療で使用できるようになりました。CGMを用いる事で夜中など、自己血糖測定がしづらい時間帯の血糖の変化を確認でき、より最適な糖尿病治療が出来るようになりました。2015年2月よりリアルタイムのグルコース値を評価できるCGMが開発され、インスリンポンプを使用している患者さんが利用できるようになりました。下記の器具は日本メドトロニックの連続6日間の測定が可能なCGMシステムです。CGMから得られたセンサグルコースは採血で得られた血糖値とは異なりますので、必ず自己血糖測定を行い、適切に較正する必要があります。
72時間測定のメドトロニックミニメド
7日間測定可能なメドトロニックiPro2
SAP(Sensor Augmented Pump)療法とは?
さて!もっとも新しいインスリンポンプは、リアルタイムCGM機能を搭載したインスリンポンプです!CGMと一体化したミニメド620インスリンポンプを用いて血糖コントロールを行う事をSAP療法といいます。海外ではSAPが低血糖予防と血糖コントロールに有用な治療方法であることが実証されています。
上はSAPを装着した状態です。お腹に穿刺されたセンサーと送信器を介してインスリンポンプのモニター画面にセンサーグルコースの値がリアルタイムで表示されます。この値を参考に適正なインスリン量を調節していくことが可能となりました。SAP療法導入の対象となる患者さんはインスリンポンプやCGMを自分で使いこなせることが必要です。また、まだ幼い小児1型糖尿病では保護者がより安心して血糖管理を行うことが期待できます。厳格なコントロールが必要な妊娠中や妊娠を計画している糖尿病患者さんも対象になります。
SAP療法の課題と未来!
医療機器の進歩は心の負担は軽くしますが、懐の負担は大きくなります。センサ個数によっても異なりますが、3割負担で月6000円から10000円以上も負担が大きくなります。また、あくまでも機器なので、センサ感知不良やセンサグルコースとSMBG値との乖離に戸惑うことも少なくありません。テープかぶれなども物理的問題もあります。心理的な面では、留置部位が2か所あることでの拘束感やかえってストレスが増えるといった患者さんもいます。インスリンが発見されて96年、これまでの進歩の歴史から、間違いなく現在の機器から進歩し、コンパクトでトラブルが少ない機器が登場するはずです。医療費の問題にもきっちり取り組みながら、新たなSAP療法に取り組んでいる患者さんからの多くの意見を頂いて、医療者が学び、企業が学び、さらなる糖尿病治療の進歩につながるよう期待しています。