今年は天災の当たり年になっては困るのですが、4月の地震から、6月は記録的豪雨の梅雨になっています。災害が広がることなく、7月は元気な蝉の声を聞きたいと願っています。さて、災害時に治療中の皆さんが一番困るのはお薬。特に糖尿病でインスリン療法をしている方は由々しき問題になります。そこで今月はみなさんが知っているけど、実はどのようなものか?わかっている人が少ないインスリン療法についてお話ししましょう。
インスリンって何だろう?
インスリンは膵臓から分泌されるホルモンです。血液の中のブドウ糖(血糖)を取り込んで、エネルギーに変えてくれる大事なホルモンです。インスリンが効かなくなったり、少なくなると血糖が高くなって、エネルギーが作られなくなります。インスリンの作用が不足して、慢性的に血糖値が高くなる病気が糖尿病なのです。
インスリン注射ってなんだろう?一度始めたら一生注射をやめられないの?
自分のインスリンが出なくなった人、効果が十分でない人が体の外からインスリンを補う糖尿病の薬物治療がインスリン療法です。インスリンは腸で分解されるために経口ではなく注射で補います。現在吸入インスリンが開発されていますが、まだまだ市場には出ていません。
インスリンを一生補わなければならない人と自分のインスリンがしっかり作用するまでの間だけ注射が必要な人がいますので、すべての人がインスリンを始めたら一生やめられないということはありません。しかし、インスリン注射は適切なタイミングで始めたほうがいいでしょう。
血糖値が高い状態が続き、医師に注射を勧められているのに内服薬にしがみ続けていると自分のインスリンが枯渇してしまって結局はインスリン注射でしか治療ができない状態になってしまいます。ベストタイミングにインスリンを受け入れることで自分の糖尿病治療の経験値も上がり、結果インスリン注射から卒業し、良いコントロールの可能性につながります。
インスリン注射は何回打つの?
1回から多い人で5回、手術などの特別な場合は頻回に打つこともあります。また、インスリンポンプ療法といって携帯型の器具で24時間持続的に皮下にインスリンを注入する治療法があります。インスリンが全く出ない1型糖尿病の方が多く用いている治療法で、毎日の注射はいりません。多くの方はインスリンを打つ前に血糖値をチェックして必要な量を皮下に注射します。採血する針の太さは22G(ゲージ)〜23Gで、数字が大きくなると太さは小さくなります。インスリン注射に使われる針は30G〜33Gととても細く、あまり痛みを訴える方はいません。自己血糖測定する際の採血針の方が大きく、痛みを感じるでしょう。
自己血糖測定って?
血糖値は常に変動をしています。インスリン治療に限らず経口薬で治療している人も自分で血糖の動きをモニターすることで、コントロールが良くなります。日常の生活で自分の血糖測定をすることが自己血糖測定です。インスリン療法の人は自己血糖測定を行うことで安心、安全にインスリン注射を行うことが出来ます。また、自己血糖測定も持続的に測定が可能となり、何度も採血をすることなくより最適なコントロールが行える様になっています。インスリンは1921年にバンティング博士と助手のベスト氏によって発見されました。すい臓を全摘された犬のマージョリーにすい臓からの抽出物を注射することで血糖値が下がることを確認されたのです。もちろん当時は金属製の大きな注射針でした。1988年にカートリッジ式のペン式注入器が登場し、1994年には使い捨て注射器へ、握りやすく、押しやすく改良が続けられています。また、注射針の進歩も太さ、長さ、衛生面を工夫され痛みのない使い捨て針となっています。インスリンの発見から、96年、世界中の糖尿病患者が命を救われ、それぞれの人生を歩んでいます。まだまだ、糖尿病ではない人たちと同じ様にとはいきませんが、出来ないことはないと言われています。(宇宙へ行くにはまだハードルが高い様ですが(◍•ᴗ•◍))インスリンについて調べると魔法の世界に入り込んだ様です。8月は進化し続けるインスリン療法と、自己血糖測定についてお話ししましょう。