期待どおりに東京パラリンピックでもオリンピックを凌ぐ勢いで連日のメダルラッシュです。五輪の夢舞台に立つパラリンピアにはオリンピアとまた違うそれぞれの道程があることでしょう。どうか閉幕まで多くの感染者を出すことなく鍛え抜いてきた素晴らしいパフォーマンスを見せて頂きたいと思います。
一方ではCOVID-19感染拡大が止まりません。この日本において入院ができず自宅療養者が増え続けています。自宅療養者に配られるのはパルスオキシメータです。これは呼吸状態の観察に用います。値が９０％切ったのに入院先が見つからなかった等報道がされています。そもそもパルスオキシメータ？酸素飽和度？呼吸不全ってどうなるの？今月は重症化の判断となる呼吸不全についてお話ししましょう。
パルスオキシメータとは？
経皮的動脈血酸素飽和度測定器のことをパルスオキシメータと言います。皮膚の上から光を当てて動脈の「赤み」を測定する機械です。血液が赤いのは赤血球中に含まれているヘモグロビンという色素のためです。このヘモグロビンは肺で取り込んだ酸素とくっついて心臓に戻り全身に運びます。このヘモグロビンは酸素とくっつくと赤くなります。酸素をため込んだ動脈血は赤く、酸素を配り終えた静脈血は黒くなります。パルスオキシメータは肺から酸素をしっかり取り込めているかを測ることができる機械です。
パルスオキシメータで測る数値を動脈血酸素飽和度(SpO2)といい血中のヘモグロビンと酸素の結合率を示します。最大値は１００％になります。通常では酸素飽和度は９５〜９９％です。ですから酸素飽和度が９５％を切る、ましては９０％を下回ると十分な酸素が受け取れていない状態であり呼吸不全に陥っている危険な状態と判断します。
呼吸不全とは？
呼吸不全には急性と慢性があります。喫煙習慣と密接な関連のある肺気腫は慢性呼吸不全の原因となる疾患の代表です。急性呼吸不全は肺炎、気胸、肺血栓塞栓症などが代表的な疾患です。新型コロナウイルス感染症で肺炎を起こし重症化し急激に酸素飽和度が低下している状態は急性の呼吸不全を合併している危険な状態です。
急性呼吸不全の症状は呼吸回数が多くなります。通常は成人では１分間に１６回〜２０回程度ですが呼吸不全になると２５回以上になり呼吸困難となります。冷汗や血圧の変化が見られ通常１分間に６０回〜８０回の脈拍数も１００以上の頻脈になります。そのほかに頭痛や不眠、意識障害など危険な症状が出現します。
呼吸不全の治療は？
酸素療法です。酸素飽和度が90％以上になるように十分な量の酸素を投与することが必要です。酸素の投与方法には軽症から中等症には鼻腔からカニューレによって投与しますが気道乾燥による粘膜の障害を防ぐために４〜６L /分が限界です。中等症以上にはフェイスマスクが必要です。さらに酸素飽和度が改善せず意識障害の低下を認める場合は躊躇なく気道を確保し人工呼吸器を装着することが必要です。救急現場の番組等で一度は見た事があると思いますが非常に緊迫の医療現場になります。
"体調が悪くなったら病院へ"の日本の常識が危うくなっています。トリアージといって救う命の優先順位をつけなければいけないのは災害現場だけでしたが、感染爆発の今、日々の診療にもトリアージを迫られる事態が起こっています。間違いなくこの新型コロナウイルス感染症は世界規模の大災害です。ただ一つ、津波や洪水と異なるのは自らの行動で感染予防対策が可能であるという事です。そして、時間はかかってもワクチンの普及や治療薬の開発で徐々に事態は落ち着いていきます。この間に自らの健康管理について、病気について見識を深めて頂く機会にして頂きますようお願いいたします。