いよいよ冬本番前です。今年の冬はフルエンザに新型コロナウイルスの第3波がいつ来るのかと気が休まることがありません。まずはインフルエンザ予防対策です!インフルエンザ予防接種を受けられてください。新しい生活様式の中で周囲に「コホン!」と咳を聞くとついドキ!?としてしまいます。「たかが咳、されど咳」コロナウイルスの前には緊張の咳です。今月はとても気になる咳についてざっくりとお話ししましょう。
咳はどうして起こるの?
日本のガイドラインでは「咳嗽(せき)は軌道内に貯留した分泌物や異物を気道外に排除するための生体防御反応」と記載されています。アメリカの有名なメイヨークリニックでは「咳嗽とは喉や気道がイガイガした時の身体の反応である」と非常にシンプルに記載されています。ヨーロッパ呼吸器学会のガイドラインでは吸気相、圧縮相、呼気相、排除相という相の構成を使って「咳嗽とは閉鎖した声門に向かって呼出される特徴的な音を呈するもの」と書かれています。もちろん咳嗽メカニズムには大脳、神経、筋肉、気管支や横隔膜、声帯など多くの臓器、器官、組織が関わっているのですが、やはり「イガイガしてゴホン!」と出るのがわかりやすい咳です。咳は嫌なものですが、逆にイガイガを感じなかったりコホンと咳が出せなくなれば大変なことになります。咳は大切な身体防御反応なのです。
咳の種類(急性か?慢性か?)
咳には乾いた咳か、湿った咳か、発熱を伴うか、呼吸困難を伴うか、心疾患があるか、消化器症状があるかなど単純ではありません。実はとても多くの原因で咳という症状が見られます。話が膨大になりますのでここでは一番考えやすい急性か、慢性かによって咳の種類をご紹介しましょう。
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急性の咳 おおよそ3週間以内の咳です。主なものを挙げます。
- かぜ症候群 最も多くほとんどが自然に軽快
- 気管支炎、肺炎 ウイルスや細菌、薬剤やアレルギーでも起こる
- 気道異物 幼児や高齢者に多い
- 肺損傷 多くは外傷によるもの
- 心不全、肺水腫 重症の心疾患、肺疾患
- 急性呼吸促迫症候群(A R D S)
今回の新型コロナウイルス感染症の重症者でも認めている
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慢性の咳 約3週間以上続く咳です。主なものを挙げます。
- 感染後咳嗽 かぜ症候群の後に続く咳ですがほぼ自然軽快し改善
- 副鼻腔気管支症候群 慢性副鼻腔炎に下気道の炎症が合併した病態
- 咳喘息 喘息の亜型で喘鳴や呼吸困難はなく呼吸機能はほぼ正常
- アトピー性咳嗽、喉頭アレルギー(アレルギー咳嗽) アレルギーによるもの
- 慢性気管支炎、閉塞性肺疾患 主に喫煙が関係
- 胃食道逆流症 胸やけなどの症状がないことも多く生活習慣との関連あり
- 心不全
- 薬剤による咳 降圧剤によるものが知られている
- 結核、百日咳、マイコプラズマなどの感染症
- 肺癌
- 心因性咳嗽
など他にも多くの疾患が考えられます。
咳が出たら?
急性の咳は鼻汁や鼻閉、発熱などの症状が伴っていれば多くはかぜ症候群です。
しかし、息苦しい、胸痛や高熱、ぐったりして意識障害があるときは重症化しているあるいは他の疾患の可能性が強くなります。いつもと違う咳と感じたら医療機関を受診しましょう。もちろん今は新型コロナウイルス感染症の診療のためかかりつけ医には必ず電話連絡をして受診しましょう。
長引く咳の時は呼吸器以外の可能性もあります。咳の出る時間、長さ、咳以外の症状がないかを確認してかかりつけ医に受診しましょう。
この冬最も注意すべきは新型コロナウイルス感染症です。主な症状は発熱と咳です。インフルエンザは突然の高熱か、かぜ症候群は鼻汁、咽頭痛から始まります。もちろん典型的な症状ではないこともあります。咳は自分も周囲にも不安感を与えますし、持続すると大変体力を消耗します。しかし原因がわかると治療薬で改善することが多い症状です。「たかが咳、されど咳」ぜひ咳に詳しくなってこの冬を賢く乗り切りましょう!